EngiAtlas 知識マップ
CHAPTER03ARTICLE01

流体力学 / 流れを分類する

FLUID MECHANICS · 03–01 / 発展

レイノルズ数Reynolds number

レイノルズ数の計算式、円管の層流・遷移・乱流の目安、代表長さと粘度の選び方を、図・例題・計算ツールで解説します。

読了目安 12分2026-09-12定義・式・単位を出典照合EN version

要旨

レイノルズ数は、流れをそのまま進ませようとする慣性の効果と、速度差をならそうとする粘性の効果の比である。値が小さい流れは粘性の影響を強く受け、値が大きい流れは慣性の影響を強く受ける。同じレイノルズ数をもつ流れは、形状と境界条件も相似なら、規模が違っても力学的に似た挙動を示す。

粘性の効果が強い慣性の効果が強い
Re≪1\mathrm{Re}\ll1
Re≫1\mathrm{Re}\gg1
Re=ρVL/μ\mathrm{Re}=\rho VL/\mu
02.

30秒で理解

レイノルズ数 Re\mathrm{Re} とは、流れの慣性と粘性の相対的な強さを表す無次元数である。蜂蜜をゆっくりかき混ぜたときの滑らかな流れと、水を速く流したときの勢いの強い流れの違いを、一つの数で比較できる。

Re\mathrm{Re} が小さいほど粘性の効果が相対的に強く、Re\mathrm{Re} が大きいほど慣性の効果が相対的に強い。ただし、Re\mathrm{Re} だけで流れの状態が必ず一意に決まるわけではなく、形状・入口の乱れ・壁面粗さなども影響する。

03.

慣性と粘性は何を競っているか

慣性は、流体が現在の運動を保とうとする効果である。速い流れ、大きな物体まわりの流れ、密度の大きい流体では、慣性の影響が大きくなりやすい。

粘性は、隣り合う流体の速度差をならす効果である。粘度 μ\mu が大きい流体や、非常に小さなすき間の流れでは、粘性の影響が相対的に大きくなる。Re\mathrm{Re} はこの二つを同じ尺度で比較する。

Re ≪ 1
粘性が支配的。流れは外力の変化へすばやく応答し、慣性による行き過ぎが小さい。
Re ≫ 1
流れ全体では慣性が支配的。ただし壁面近くでは、大きな Re\mathrm{Re} でも粘性が重要である。
04.

レイノルズ数の式

代表速度 VV、代表長さ LL、密度 ρ\rho、粘度 μ\mu を用いると、レイノルズ数は式 (1) で表される [1,3]。動粘度 ν=μ/ρ\nu=\mu/\rho を用いた右端の形も同じ意味である。

分子 ρVL\rho VL は慣性の尺度、分母 μ\mu は粘性の尺度である。単位を展開するとすべて打ち消し合うため、Re\mathrm{Re} は単位をもたない無次元数である。

式 (1)レイノルズ数
Re=ρVLμ=VLν\mathrm{Re}=\frac{\rho V L}{\mu}=\frac{V L}{\nu}
05.

記号・単位

粘度 μ\mu のSI単位は Pa⋅s\mathrm{Pa{\cdot}s}、動粘度 ν\nu のSI単位は m2/s\mathrm{m^2/s} である [4]。レイノルズ数には単位を付けない。

レイノルズ数に用いる記号とSI単位
記号意味SI単位
Re\mathrm{Re}レイノルズ数—\text{—}
ρ\rho密度kg/m3\mathrm{kg/m^3}
VV代表速度m/s\mathrm{m/s}
LL代表長さm\mathrm{m}
μ\mu粘度Pa⋅s\mathrm{Pa{\cdot}s}
ν\nu動粘度m2/s\mathrm{m^2/s}
06.

代表速度と代表長さを先に決める

Re\mathrm{Re} の数値は、どの速度と長さを代表値に選ぶかで変わる。式だけを書かず、Re\mathrm{Re} の定義と流れの対象を必ずセットで示す。

円管内流では、断面平均速度 VV と管の内径 DD を用いる ReD=ρVD/μ\mathrm{Re}_D=\rho VD/\mu が標準的である。円管以外のダクトでは水力直径、物体まわりの流れでは物体径や翼弦長など、現象を支配する長さを選ぶ。

円管内流
VV:断面平均速度、LL = DD:管内径
円柱・球まわり
VV:主流速度、LL:直径
翼まわり
VV:主流速度、LL:翼弦長
07.

円管内流では何を判断できるか

十分に長い滑らかな円管の内部流れでは、一般に ReD<2300\mathrm{Re}_D<2300 を層流、2300–40002300\text{–}4000付近を遷移域、ReD>4000\mathrm{Re}_D>4000 を乱流の目安とする [1]。

この値は自然法則の鋭い境界ではない。入口の乱れ、配管の振動、継手、壁面粗さなどによって遷移位置は変わる。設計では目安の近くを一つの値だけで断定せず、安全側の評価や実測を行う。

08.

例題:水が流れる円管

20 ℃の水が、内径 D=0.020 mD=0.020\ \mathrm{m} の円管を断面平均速度 V=0.50 m/sV=0.50\ \mathrm{m/s} で流れている。密度を ρ=998 kg/m3\rho=998\ \mathrm{kg/m^3}、粘度を μ=1.002×10−3 Pa⋅s\mu=1.002\times10^{-3}\ \mathrm{Pa{\cdot}s} として ReD\mathrm{Re}_D を求め、流れの状態を判定する。

円管なので代表長さには内径 DD、代表速度には断面平均速度 VV を用いる。数値を式 (2) に代入すると ReD≈9.96×103\mathrm{Re}_D\approx9.96\times10^3 となる。4000を十分に上回るため、この条件の発達した円管内流は乱流と判定する。

V=0.50 m/sV=0.50\ \mathrm{m/s}
D=0.020 mD=0.020\ \mathrm{m}
水 20 ℃
ρ=998 kg/m3\rho=998\ \mathrm{kg/m^3}
μ=1.002×10−3 Pa⋅s\mu=1.002\times10^{-3}\ \mathrm{Pa{\cdot}s}
式 (2)円管のレイノルズ数
ReD=(998)(0.50)(0.020)1.002×10−3≈9.96×103\mathrm{Re}_D=\frac{(998)(0.50)(0.020)}{1.002\times10^{-3}}\approx9.96\times10^3
09.

レイノルズ数計算ツール

密度 ρ\rho、断面平均速度 VV、管内径 DD、粘度 μ\mu を入力すると、円管のレイノルズ数と流れの目安を計算できる。初期値には上の例題と同じ20 ℃の水の条件を入れている。

計算結果は円管内流に対する目安である。円管以外の流れでは、対象に合った代表長さと遷移条件を用いる。

CALCULATOR

円管のレイノルズ数を計算

kg/m³
m/s
m
Pa·s
レイノルズ数 ReD9,960.1—
円管内流の目安乱流域

判定は、十分に長い円管内流に対する一般的な目安です。入口の乱れ、継手、振動、壁面粗さによって遷移条件は変わります。

10.

模型と実機をつなぐ

幾何学的に相似な模型と実機で Re\mathrm{Re} を一致させると、慣性と粘性の相対的な強さをそろえられる。これを力学的相似の条件の一つとして、風洞試験や水槽試験の結果を実機へ換算する [3]。

ただし自由表面が重要ならフルード数、高速気体ならマッハ数など、別の無次元数も同時に重要になる。すべてを小型模型で一致させられない場合は、支配的な現象に応じて優先順位を決める。

11.

よくある間違い

計算前に、流体物性の温度、代表速度、代表長さを一行で定義すると取り違えを防ぎやすい。

直径と半径を混同
円管では通常、代表長さに内径 DD を用いる。
流量をそのままVへ入れる
体積流量 QQ は速度ではない。断面平均速度 V=Q/AV=Q/A に直す。
動粘度と粘度を混同
Re=VL/ν\mathrm{Re}=VL/\nu または ρVL\rho VL/μ\mu。二つの式を混ぜない。
Reが大きければ粘性ゼロ
壁面の非すべり条件や境界層では、大きな Re\mathrm{Re} でも粘性が本質的である。
12.

応用

管摩擦係数、圧力損失、抗力係数、熱伝達・物質伝達の相関式、模型実験の条件設定など、多くの実務式は Re\mathrm{Re} を入力として用いる。

次は層流と乱流を比較し、速度分布・混合・圧力損失がどのように変わるかを学ぶ。

参考文献