FLUID MECHANICS · 03–01 / 発展
レイノルズ数Reynolds number
レイノルズ数の計算式、円管の層流・遷移・乱流の目安、代表長さと粘度の選び方を、図・例題・計算ツールで解説します。
要旨
レイノルズ数は、流れをそのまま進ませようとする慣性の効果と、速度差をならそうとする粘性の効果の比である。値が小さい流れは粘性の影響を強く受け、値が大きい流れは慣性の影響を強く受ける。同じレイノルズ数をもつ流れは、形状と境界条件も相似なら、規模が違っても力学的に似た挙動を示す。
30秒で理解
レイノルズ数 とは、流れの慣性と粘性の相対的な強さを表す無次元数である。蜂蜜をゆっくりかき混ぜたときの滑らかな流れと、水を速く流したときの勢いの強い流れの違いを、一つの数で比較できる。
が小さいほど粘性の効果が相対的に強く、 が大きいほど慣性の効果が相対的に強い。ただし、 だけで流れの状態が必ず一意に決まるわけではなく、形状・入口の乱れ・壁面粗さなども影響する。
慣性と粘性は何を競っているか
慣性は、流体が現在の運動を保とうとする効果である。速い流れ、大きな物体まわりの流れ、密度の大きい流体では、慣性の影響が大きくなりやすい。
粘性は、隣り合う流体の速度差をならす効果である。粘度 が大きい流体や、非常に小さなすき間の流れでは、粘性の影響が相対的に大きくなる。 はこの二つを同じ尺度で比較する。
- Re ≪ 1
- 粘性が支配的。流れは外力の変化へすばやく応答し、慣性による行き過ぎが小さい。
- Re ≫ 1
- 流れ全体では慣性が支配的。ただし壁面近くでは、大きな でも粘性が重要である。
レイノルズ数の式
代表速度 、代表長さ 、密度 、粘度 を用いると、レイノルズ数は式 (1) で表される [1,3]。動粘度 を用いた右端の形も同じ意味である。
分子 は慣性の尺度、分母 は粘性の尺度である。単位を展開するとすべて打ち消し合うため、 は単位をもたない無次元数である。
記号・単位
粘度 のSI単位は 、動粘度 のSI単位は である [4]。レイノルズ数には単位を付けない。
| 記号 | 意味 | SI単位 |
|---|---|---|
| レイノルズ数 | ||
| 密度 | ||
| 代表速度 | ||
| 代表長さ | ||
| 粘度 | ||
| 動粘度 |
代表速度と代表長さを先に決める
の数値は、どの速度と長さを代表値に選ぶかで変わる。式だけを書かず、 の定義と流れの対象を必ずセットで示す。
円管内流では、断面平均速度 と管の内径 を用いる が標準的である。円管以外のダクトでは水力直径、物体まわりの流れでは物体径や翼弦長など、現象を支配する長さを選ぶ。
- 円管内流
- :断面平均速度、 = :管内径
- 円柱・球まわり
- :主流速度、:直径
- 翼まわり
- :主流速度、:翼弦長
円管内流では何を判断できるか
十分に長い滑らかな円管の内部流れでは、一般に を層流、付近を遷移域、 を乱流の目安とする [1]。
この値は自然法則の鋭い境界ではない。入口の乱れ、配管の振動、継手、壁面粗さなどによって遷移位置は変わる。設計では目安の近くを一つの値だけで断定せず、安全側の評価や実測を行う。
例題:水が流れる円管
20 ℃の水が、内径 の円管を断面平均速度 で流れている。密度を 、粘度を として を求め、流れの状態を判定する。
円管なので代表長さには内径 、代表速度には断面平均速度 を用いる。数値を式 (2) に代入すると となる。4000を十分に上回るため、この条件の発達した円管内流は乱流と判定する。
レイノルズ数計算ツール
密度 、断面平均速度 、管内径 、粘度 を入力すると、円管のレイノルズ数と流れの目安を計算できる。初期値には上の例題と同じ20 ℃の水の条件を入れている。
計算結果は円管内流に対する目安である。円管以外の流れでは、対象に合った代表長さと遷移条件を用いる。
円管のレイノルズ数を計算
判定は、十分に長い円管内流に対する一般的な目安です。入口の乱れ、継手、振動、壁面粗さによって遷移条件は変わります。
模型と実機をつなぐ
幾何学的に相似な模型と実機で を一致させると、慣性と粘性の相対的な強さをそろえられる。これを力学的相似の条件の一つとして、風洞試験や水槽試験の結果を実機へ換算する [3]。
ただし自由表面が重要ならフルード数、高速気体ならマッハ数など、別の無次元数も同時に重要になる。すべてを小型模型で一致させられない場合は、支配的な現象に応じて優先順位を決める。
よくある間違い
計算前に、流体物性の温度、代表速度、代表長さを一行で定義すると取り違えを防ぎやすい。
- 直径と半径を混同
- 円管では通常、代表長さに内径 を用いる。
- 流量をそのままVへ入れる
- 体積流量 は速度ではない。断面平均速度 に直す。
- 動粘度と粘度を混同
- または /。二つの式を混ぜない。
- Reが大きければ粘性ゼロ
- 壁面の非すべり条件や境界層では、大きな でも粘性が本質的である。
応用
管摩擦係数、圧力損失、抗力係数、熱伝達・物質伝達の相関式、模型実験の条件設定など、多くの実務式は を入力として用いる。
次は層流と乱流を比較し、速度分布・混合・圧力損失がどのように変わるかを学ぶ。
参考文献
参照日:2026年9月12日。外部専門家による査読は未実施です。
- [1] MIT OpenCourseWare, Reynolds Number & Pipe Flow, How and Why Machines Work.↗
- [2] O. Reynolds, An experimental investigation of the circumstances which determine whether the motion of water shall be direct or sinuous, Philosophical Transactions of the Royal Society of London, 174, 935–982 (1883).↗
- [3] MIT OpenCourseWare, Fluids — Lecture 4: Dimensional Analysis and Dynamic Similarity.↗
- [4] NIST Guide to the SI, Chapter 8: Viscosity and mass density.↗