FLUID MECHANICS · 03–02 / 発展
層流と乱流Laminar and turbulent flow
層流・遷移・乱流の違いを、染料線、速度分布、レイノルズ数、混合と圧力損失、図付きの円管例題から理解します。
要旨
層流では流体粒子が隣の層と大きく混ざらず、速度変動の小さい整った流れをつくる。乱流では大小の渦と不規則な速度変動が生じ、運動量や熱が横方向へ強く運ばれる。円管内流ではレイノルズ数を第一の目安にするが、遷移は入口の乱れ、振動、壁面粗さなどにも左右される。
30秒で理解
細い管へ染料を静かに入れ、流速を小さくすると、染料は一本の線を保ったまま流れる。これが層流である。流速を上げると染料線は揺らぎ、やがて管全体へ広がる。この不規則に混ざる状態が乱流である [1,2]。
層流と乱流は、単に『きれいな流れ』と『乱れた流れ』という見た目の違いではない。速度分布、混ざりやすさ、壁面摩擦、圧力損失が変わるため、配管・熱交換器・流量計などの設計結果にも直接影響する。
何が違うのか
層流でも流体粒子は下流へ移動するが、平均的には隣の層を横切る大きな動きが少ない。混合は主に分子拡散に頼るため、熱や物質が横方向へ伝わる速さは比較的小さい。
乱流では、平均流れに重なって速度が時間的・空間的に変動する。渦運動が流体の塊を横方向へ運ぶため、運動量・熱・物質の交換が大きくなる [4]。瞬間の流れは不規則でも、時間平均した速度や圧力には再現性のある分布が現れる。
- 層流
- 速度変動が小さく、流体粒子はおおむね層を保って進む。
- 乱流
- 三次元的な速度変動と渦運動により、流体が横方向にも強く混ざる。
- 遷移流
- 層流と乱流が時間的・空間的に入れ替わり、外乱の影響を強く受ける。
染料線で流れを見る
Reynoldsの実験では、透明な円管へ細い染料線を注入して流れを観察した。低い流速では染料線が細く保たれ、流速を上げると線が揺らいで管断面へ拡散した [2]。
染料が広がること自体が乱流の定義ではない。重要なのは、速度変動が横方向の輸送を生み、染料を運んでいる点である。分子拡散だけでも染料は徐々に広がるが、その速さは乱流混合より小さい。
円管ではレイノルズ数を目安にする
円管内流では、管内径 、断面平均速度 、密度 、粘度 から を求める。十分に長い滑らかな円管では、を層流、付近を遷移域、を乱流とする区分が、工学計算の一般的な目安である [1]。
この区分は、2300を1だけ超えると流れ全体が突然乱流になるという意味ではない。管内流の遷移は有限の外乱によって起こり、外乱を非常に小さくすれば高い でも層流が保たれる場合がある [3]。
速度分布はどう変わるか
十分に発達した円管内の層流では、速度分布は放物線形になる。壁面では非すべり条件により速度が零、管中心では最大となり、中心速度は断面平均速度 の2倍である。
乱流の時間平均速度分布は、層流より中央部が平らで、壁面近くで急に零へ近づく。渦が高速の流体と低速の流体を交換し、管中央の運動量を壁面近くへ運ぶためである。
混合と圧力損失への影響
乱流混合は、熱交換器や反応器では熱・物質移動を促進する。一方、壁面へ運ばれる運動量も増えるため、同じ管・同じ平均速度で比べると、一般に乱流のほうが壁面せん断応力と圧力損失が大きい。
発達した円管層流のDarcy摩擦係数 は式 (3) で厳密に求められる。乱流の はレイノルズ数だけでなく相対粗さにも依存し、ムーディ線図やColebrook式などの相関式を用いる。
記号・単位
レイノルズ数と摩擦係数は無次元量である。粘度 のSI単位は 、動粘度 のSI単位は である [5]。
| 記号 | 意味 | SI単位 |
|---|---|---|
| 管内径を代表長さとするレイノルズ数 | ||
| 断面平均速度 | ||
| 管内径 | ||
| 管半径 | ||
| 管中心からの半径方向位置 | ||
| 密度 | ||
| 粘度 | ||
| 動粘度 | ||
| Darcy摩擦係数 |
例題:同じ円管で流速を変える
20 ℃の水が内径 の滑らかな円管を流れる。、 とし、層流上限の目安 と乱流域の目安 に対応する平均速度を求める。
式 (1) を について解いた式 (4)へ代入すると、式 (5)の結果を得る。したがって なら層流域、なら遷移域、なら乱流域の目安となる。
使用条件と適用外
2300と4000の目安は、円管の内径と断面平均速度で定義した に対するものである。平板境界層、噴流、開水路、回転流れでは、代表長さと遷移機構が異なる。
非ニュートン流体では粘度がせん断速度に依存するため、通常の をそのまま使えない場合がある。また、脈動流・急加速流・短い入口区間では、定常で十分に発達した円管流の判定や速度分布を直接適用しない。
よくある間違い
流れの名称だけで判断せず、対象、代表長さ、平均速度、物性温度を一緒に記録する。
- 乱流=流れが速い
- 速さだけでは決まらない。寸法、密度、粘度を含む で比較する。
- 遷移域を乱流と断定
- 遷移域は外乱に敏感で、層流域と乱流域が混在することがある。
- 乱流では平均値が使えない
- 瞬間値は変動しても、時間平均した速度・圧力・損失を工学計算に使える。
- 乱流では粘性を無視できる
- 壁面近くのせん断と散逸には粘性が不可欠である。
応用
配管の圧力損失、流量計の選定、熱交換器の伝熱、反応器の混合、クリーンルームの気流、潤滑膜、マイクロ流路などでは、層流か乱流かを最初に判定する。
層流は予測しやすく穏やかだが混ざりにくい。乱流は混合・伝熱に有利だが、圧力損失、振動、騒音を増やす場合がある。目的に応じて、流れの状態を避けるのではなく選ぶ。
参考文献
参照日:2026年8月14日。外部専門家による査読は未実施です。
- [1] MIT OpenCourseWare, Reynolds Number & Pipe Flow, How and Why Machines Work.↗
- [2] O. Reynolds, An experimental investigation of the circumstances which determine whether the motion of water shall be direct or sinuous, Philosophical Transactions of the Royal Society of London, 174, 935–982 (1883).↗
- [3] V. Mukund and B. Hof, The critical point of the transition to turbulence in pipe flow, Journal of Fluid Mechanics, 839, 76–94 (2018).↗
- [4] MIT OpenCourseWare, Transport Processes in the Environment, Basics of Turbulent Flow.↗
- [5] NIST Guide to the SI, Chapter 8: Viscosity and mass density.↗