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CHAPTER04ARTICLE01

流体力学 / 設計に使う

FLUID MECHANICS · 04–01 / 応用

管路損失Pipe-flow pressure loss

直管を流れる流体の圧力損失と損失水頭を、Darcy–Weisbach式、摩擦係数、局部損失、図解、計算例と計算ツールから理解します。

読了目安 16分2026-08-20定義・式・単位を出典照合EN version

要旨

流体が管内を流れると、壁面せん断によって機械的エネルギーが内部エネルギーへ散逸し、流れ方向に圧力が低下する。直管の摩擦損失はDarcy–Weisbach式で表され、管長、管径、平均流速、密度、Darcy摩擦係数から圧力損失または損失水頭を求められる。

02.

30秒で理解

長い管、細い管、速い流れほど、入口から出口までに大きな圧力が失われる。これは流体と管壁の摩擦によって、ポンプが与えた機械的エネルギーの一部が散逸するためである。

直径が一定の水平直管では、Darcy–Weisbach式により圧力損失 Δp\Delta p を計算できる。最初に平均流速 VV とReynolds数を求め、流れの状態と管の粗さからDarcy摩擦係数 ff を決める。

03.

管の中で何が失われるのか

管壁では粘性によるせん断応力が流れを妨げる。流体は壁面に仕事をし続け、その結果、巨視的な機械的エネルギーが熱へ変わる。十分に発達した水平直管では断面平均流速は上流と下流で同じでも、静圧 p1p_1 から p2p_2 へ低下する。

ここでいう「損失」は質量やエネルギーが消えるという意味ではない。流れから取り出して仕事に使える機械的エネルギーが、粘性散逸によって回収しにくい内部エネルギーへ移ることを指す。

水平直管で圧力が低下する仕組み一定直径の管を左から右へ流れる流体について、上流圧力が下流圧力より高く、壁面せん断が流れと反対向きに働くことを示す。流れ壁面せん断は流れと反対向き
LL
DD
p1p_1
p2p_2
上流:高い下流:低い
04.

Darcy–Weisbach式

一定直径の円管における直管摩擦損失は、式 (1) の圧力形式または式 (2) の水頭形式で表せる [1,2]。L/DL/D は管の長さと太さの比、ρV2/2\rho V^2/2 は動圧であり、Darcy摩擦係数 ff が壁面摩擦の強さを表す。

この式の ff はDarcy摩擦係数である。Fanning摩擦係数を使う資料もあり、その値はDarcy摩擦係数の4分の1なので、式へ代入する前に定義を必ず確認する。

式 (1)直管の圧力損失
Δp=fLDρV22\Delta p=f\frac{L}{D}\frac{\rho V^2}{2}
式 (2)直管の損失水頭
hf=fLDV22gh_{\mathrm f}=f\frac{L}{D}\frac{V^2}{2g}
式 (3)圧力損失と損失水頭
Δp=ρghf\Delta p=\rho g h_{\mathrm f}
05.

記号・単位

式では内径と管長に同じ長さ単位を用いる。計算ツールではSI単位へそろえ、単位記号は立体で表す [4]。

管路損失で用いる記号とSI単位
記号意味SI単位
Δp\Delta p直管の圧力損失Pa\mathrm{Pa}
hfh_{\mathrm f}直管の損失水頭m\mathrm m
ffDarcy摩擦係数—
LL直管部の長さm\mathrm m
DD管の内径m\mathrm m
VV断面平均流速m/s\mathrm{m/s}
ρ\rho流体の密度kg/m3\mathrm{kg/m^3}
gg重力加速度m/s2\mathrm{m/s^2}
KK局部損失係数—
06.

摩擦係数をどう決めるか

Darcy摩擦係数 ff は定数ではなく、Reynolds数 ReD\mathrm{Re}_D と相対粗さ ε/D\varepsilon/D に依存する [1–3]。円管の十分に発達した層流では、式 (4) を使える。

乱流ではMoody線図またはColebrook–White式などから求める。遷移域では入口条件や乱れの影響を受けやすいため、層流式と乱流式を機械的につないで設計値にしない。

式 (4)円管層流のDarcy摩擦係数
f=64ReDf=\frac{64}{\mathrm{Re}_D}
十分に発達した円管層流。
式 (5)Colebrook–White式
1f=−2log⁡10 ⁣(ε3.7D+2.51ReDf)\frac{1}{\sqrt f}=-2\log_{10}\!\left(\frac{\varepsilon}{3.7D}+\frac{2.51}{\mathrm{Re}_D\sqrt f}\right)
十分に発達した乱流。fは反復計算で求める。
層流
f=64/ReDf=64/\mathrm{Re}_D。表面粗さの影響より粘性の影響が支配的。
乱流
ff は ReD\mathrm{Re}_D と ε/D\varepsilon/D の両方に依存する。
確認事項
Darcy摩擦係数かFanning摩擦係数かを資料ごとに確認する。
07.

曲がり・弁・入口の局部損失

曲がり、弁、急拡大、急縮小、入口、出口では流れがはく離・混合し、直管摩擦とは別の損失が生じる。各要素を局部損失係数 KK で表すと、同じ区間の直管損失と式 (6) のように足し合わせられる。

KK は形状、開度、Reynolds数、基準とする流速によって変わる。カタログや規格の値を使うときは、どの断面の速度を基準にした係数かを確認する。

式 (6)直管損失と局部損失の合計
Δptotal=(fLD+∑K)ρV22\Delta p_{\mathrm{total}}=\left(f\frac{L}{D}+\sum K\right)\frac{\rho V^2}{2}
08.

例題:水を水平直管へ流す

密度 ρ=1000 kg/m3\rho=1000\ \mathrm{kg/m^3} の水が、長さ L=20 mL=20\ \mathrm m、内径 D=0.050 mD=0.050\ \mathrm m の水平直管を平均流速 V=1.5 m/sV=1.5\ \mathrm{m/s} で流れる。Darcy摩擦係数を f=0.025f=0.025 として、直管の圧力損失と損失水頭を求める。

式 (1) に代入すると圧力損失は11.25 kPaとなる。式 (3) で g=9.80665 m/s2g=9.80665\ \mathrm{m/s^2} とすると、損失水頭は約1.15 mである。これは、この直管だけで水柱約1.15 mに相当する機械的エネルギーを失うことを意味する。

式 (7)圧力損失
Δp=0.025200.0501000(1.5)22=11250 Pa\Delta p=0.025\frac{20}{0.050}\frac{1000(1.5)^2}{2}=11250\ \mathrm{Pa}
式 (8)損失水頭
hf=11250(1000)(9.80665)≈1.15 mh_{\mathrm f}=\frac{11250}{(1000)(9.80665)}\approx1.15\ \mathrm m
09.

計算ツール

密度、管長、内径、平均流速、Darcy摩擦係数を入力すると、直管の圧力損失と損失水頭を計算する。摩擦係数はMoody線図や適切な相関式で別途確認する。

CALCULATOR

直管の圧力損失を計算

kg/m³
m
m
m/s
—
圧力損失 Δp11.25kPa
損失水頭 hf1.147m

Darcy–Weisbach式による直管損失です。局部損失、高低差、ポンプ仕事は含みません。

10.

使用条件・適用外

ここで扱う式は、一定内径の直管における断面平均量を使う定常計算を基本としている。密度変化が大きい高速気体、非ニュートン流体、二相流、脈動流、極端に短い入口区間では、追加のモデルが必要になる。

圧力差には摩擦損失だけでなく、高低差、速度変化、ポンプやタービンの仕事も含まれ得る。二点間の圧力差をそのまま直管損失とみなさず、拡張Bernoulli式で各項を整理する。

11.

よくある間違い

計算前に、摩擦係数の定義、管径、流速、損失範囲を図へ書き込むと取り違えを減らせる。

外径を使う
流体が通る内径 DD を使う。
DarcyとFanningを混同
同じ記号 ff でも定義が4倍異なる。
直管損失だけで配管全体を評価
弁、曲がり、入口、出口などの局部損失を加える。
流速を流量と混同
体積流量 QQ から断面平均流速 V=Q/AV=Q/A を求める。
圧力差をすべて摩擦損失とする
高低差、断面積変化、機械仕事がある場合はエネルギー式全体で評価する。

参考文献