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CHAPTER04ARTICLE02

流体力学 / 設計に使う

FLUID MECHANICS · 04–02 / 応用

ポンプと配管系Pumps and piping systems

ポンプ曲線と配管抵抗曲線の交点から運転点を求め、全揚程、流量、効率、軸動力を図解・例題・計算ツールで理解します。

読了目安 17分2026-08-27定義・式・単位を出典照合EN version

要旨

ポンプが実際に送り出す流量は、ポンプ単体だけでは決まらない。ポンプが流量ごとに発生できる揚程と、配管系が同じ流量を通すために必要とする揚程が一致する点が運転点である。ポンプ曲線と配管抵抗曲線を一枚に重ねると、流量、全揚程、動力、制御による変化を一つの関係として読める。

02.

30秒で理解

ポンプは流体へ機械的エネルギーを与え、低い場所から高い場所へ運んだり、管摩擦や弁の抵抗に打ち勝って流したりする。ポンプが与えるエネルギーは、流体柱の高さに換算した全揚程 HH で表す。

遠心ポンプでは一般に、流量 QQ が増えるほど発生できる揚程は低下する。一方、配管系で必要な揚程は、流量が増えるほど摩擦損失によって増加する。この二つが一致する交点が実際の運転点である [1–3]。

03.

ポンプの全揚程とは何か

全揚程 HH は、ポンプが流体の単位重量あたりに加える機械的エネルギーを長さで表した量で、SI単位はメートルである。吸込側と吐出側の圧力、高さ、速度の差をエネルギー式で整理すると式 (1) になる。

圧力だけを測って揚程と呼ぶと、高低差や管径変化を取り落とす。タンク間の送水では、まず液面の高低差と圧力差に相当する静的な必要揚程を求め、そこへ流量に応じた損失水頭を加える。

式 (1)ポンプが加える全揚程
H=(p2−p1ρg)+(z2−z1)+(V22−V122g)+hLH=\left(\frac{p_2-p_1}{\rho g}\right)+\left(z_2-z_1\right)+\left(\frac{V_2^2-V_1^2}{2g}\right)+h_{\mathrm L}
04.

運転点は二つの曲線の交点

ポンプ曲線 Hp(Q)H_\mathrm{p}(Q) は、一定回転速度・一定羽根車径において、ポンプが各流量で発生できる揚程を示す。実機ではメーカーの試験曲線を用い、同じ図に効率、入力動力、必要NPSHが示されることが多い [1]。

配管抵抗曲線 Hsys(Q)H_\mathrm{sys}(Q) は、配管系が各流量を通すために必要とする揚程を示す。実際の流れは、ポンプが与える揚程と配管系が必要とする揚程が等しい点へ落ち着く。図の青い曲線と橙色の曲線の交点が運転点である [2,3]。

ポンプ曲線と配管抵抗曲線から運転点を求める図流量とともに低下するポンプ曲線と、静的揚程から上昇する配管抵抗曲線が交差し、運転流量と運転揚程が定まる。
QQ
HH
流量揚程ポンプ曲線配管抵抗曲線運転点
QopQ_{\mathrm{op}}
HopH_{\mathrm{op}}
HstaticH_{\mathrm{static}}
式 (2)運転点の条件
Hp(Qop)=Hsys(Qop)H_\mathrm{p}(Q_\mathrm{op})=H_\mathrm{sys}(Q_\mathrm{op})
05.

配管抵抗曲線をつくる

単純な一経路の配管系では、必要揚程を、流量が零でも必要な静的揚程 HstaticH_\mathrm{static} と、流量とともに増える損失水頭 hL(Q)h_\mathrm L(Q) に分けられる。管摩擦係数や局部損失係数を一定と近似すれば、速度は流量に比例するため損失は概ね Q2Q^2 に比例する [2,3]。

弁を絞ると抵抗係数が増えて曲線が急になり、運転点は低流量側へ移る。液面高さや容器圧力が変わると静的揚程が変わり、曲線全体の開始位置が上下する。

式 (3)単純な配管系の必要揚程
Hsys(Q)=Hstatic+hL(Q)≈Hstatic+bQ2H_\mathrm{sys}(Q)=H_\mathrm{static}+h_\mathrm L(Q)\approx H_\mathrm{static}+bQ^2
06.

記号・単位

流量は m3/s\mathrm{m^3/s}、揚程は m\mathrm m を標準とする。揚程曲線の係数は流量に用いる単位で数値が変わるため、曲線式と単位を必ず一組で扱う [4]。

ポンプと配管系で用いる記号とSI単位
記号意味SI単位
QQ体積流量m3/s\mathrm{m^3/s}
QopQ_\mathrm{op}運転点の流量m3/s\mathrm{m^3/s}
HH全揚程m\mathrm m
HpH_\mathrm{p}ポンプが発生する揚程m\mathrm m
HsysH_\mathrm{sys}配管系が必要とする揚程m\mathrm m
HstaticH_\mathrm{static}高低差・圧力差による静的揚程m\mathrm m
PhP_\mathrm h流体へ伝わる水動力W\mathrm W
PinP_\mathrm{in}ポンプ軸への入力動力W\mathrm W
η\etaポンプ効率—
07.

揚程から必要動力を求める

運転点の流量と揚程が分かれば、流体へ実際に伝わる水動力は式 (4) で求められる。ポンプ内部の流体損失、円板摩擦、漏れ、軸受などの損失があるため、軸から与える入力動力は水動力より大きい。

効率 η\eta は運転点によって変わる。カタログの最高効率だけを使わず、求めた運転点に対応する効率を曲線から読む。運転点を最高効率点(BEP)付近へ置くことは、消費電力だけでなく信頼性の面でも重要である [1,2]。

式 (4)水動力
Ph=ρgQHP_\mathrm h=\rho gQH
式 (5)必要な入力動力
Pin=Phη=ρgQHηP_\mathrm{in}=\frac{P_\mathrm h}{\eta}=\frac{\rho gQH}{\eta}
08.

例題:ポンプと配管の運転点

水を送るポンプの近似曲線を Hp=30−1200Q2H_\mathrm{p}=30-1200Q^2、配管抵抗曲線を Hsys=10+6800Q2H_\mathrm{sys}=10+6800Q^2 とする。QQ は m3/s\mathrm{m^3/s}、HH は m\mathrm m である。密度 ρ=1000 kg/m3\rho=1000\ \mathrm{kg/m^3}、ポンプ効率 η=0.75\eta=0.75 として、運転点と入力動力を求める。

二つの揚程を等置すると Qop=0.050 m3/sQ_\mathrm{op}=0.050\ \mathrm{m^3/s}、すなわち50 L/sとなる。この流量をどちらの曲線へ代入しても揚程は27 mで一致する。水動力は約13.2 kW、必要な入力動力は約17.7 kWである。

式 (6)運転点の流量
30−1200Q2=10+6800Q2⇒Qop=0.050 m3/s30-1200Q^2=10+6800Q^2\quad\Rightarrow\quad Q_\mathrm{op}=0.050\ \mathrm{m^3/s}
式 (7)運転点の揚程
Hop=30−1200(0.050)2=27.0 mH_\mathrm{op}=30-1200(0.050)^2=27.0\ \mathrm m
式 (8)水動力と入力動力
Ph=(1000)(9.80665)(0.050)(27)=13.2 kW,Pin=13.20.75=17.7 kWP_\mathrm h=(1000)(9.80665)(0.050)(27)=13.2\ \mathrm{kW},\qquad P_\mathrm{in}=\frac{13.2}{0.75}=17.7\ \mathrm{kW}
09.

計算ツール

簡略化した放物線 Hp=H0−aQ2H_\mathrm p=H_0-aQ^2 と Hsys=Hstatic+bQ2H_\mathrm{sys}=H_\mathrm{static}+bQ^2 の交点を計算する。実際のポンプ選定では、この近似式ではなくメーカーの試験曲線を使用する。

CALCULATOR

ポンプと配管系の運転点を計算

m
s²/m⁵
m
s²/m⁵
kg/m³
%
運転流量 Qop50L/s
運転揚程 Hop27m
水動力 Ph13.24kW
入力動力 Pin17.65kW

この計算は放物線近似の学習用です。実機選定にはメーカーの試験曲線と許容運転範囲を使用してください。

10.

使用条件・適用外

ここで扱う単純な配管抵抗曲線は、一つの吸込源から一つの吐出先へ流れる定常・単相の配管系を想定する。分岐網、複数の圧力区域、流量により開閉する弁、非ニュートン流体、二相流では、各経路を同時に解くモデルが必要になる。

ポンプ曲線は回転速度、羽根車径、流体の粘度、摩耗によって変化する。さらに選定時には、効率、許容運転範囲、必要NPSH、吸込条件、モーター容量、材料、温度を確認し、交点だけで採否を決めない。

11.

よくある間違い

運転点を求める前に、対象区間、液面、管径、弁、基準圧力を系統図へ書き込むと、静的揚程と損失水頭の混同を防げる。

最大流量を運転流量とする
実際の流量はポンプ曲線と配管抵抗曲線の交点で決まる。
圧力差だけで全揚程を求める
高さと速度の差もエネルギー式に含める。
弁を絞ってもポンプ曲線が変わると考える
一定回転速度なら主に配管抵抗曲線が急になり、運転点が移る。
効率を常に一定とする
効率は流量とともに変わるので運転点で読む。
NPSHを揚程へ足す
NPSHは吸込側のキャビテーション余裕を評価する別の条件である。

参考文献