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CHAPTER02ARTICLE02

流体力学 / 保存則を立てる

FLUID MECHANICS · 02–02 / 基礎

運動量保存則Conservation of momentum

流体に作用する力と、検査体積内の運動量変化・検査面を通過する運動量流束との関係を定式化する。

読了目安 14分2026-08-13定義・式・単位を出典照合EN version

要旨

運動量保存則はニュートンの第2法則を流体へ適用したものである。検査体積に働く外力は、内部の運動量変化と検査面を通過する運動量流束の和に等しく、ノズル、曲がり管、噴流、翼、CFDへ直接つながる。

02.

運動量とは何か

運動量とは、物体が「どの向きへ、どれだけ運動しているか」を表す量である。質量 mm、速度 v\boldsymbol{v} の物体がもつ運動量 p\boldsymbol{p} は式 (1) で定義される。質量または速さが大きいほど運動量は大きく、その向きは速度と同じである。

流体も質量をもって移動するため、運動量をもつ。微小な流体の質量 dm\mathrm d m が速度 u\boldsymbol{u} で動くとき、その運動量は dp=u dm\mathrm d\boldsymbol{p}=\boldsymbol{u}\,\mathrm d m である。したがって、単位体積当たりの運動量は ρu\rho\boldsymbol{u}、検査体積内の運動量は P\boldsymbol{P} = ∫ρu\rho\boldsymbol{u} dV\mathrm dV と表せる。

外力が作用すると運動量が変化する。ニュートンの第2法則は、この関係を式 (2) で表す。ノズルで流れを加速する場合も、曲がり管で流れの向きを変える場合も、運動量を変えるための力が必要になる。

式 (1)運動量の定義
p=mv\boldsymbol{p}=m\boldsymbol{v}
p\boldsymbol{p}
運動量ベクトル[kg⋅m/s\mathrm{kg{\cdot}m/s}]
mm
質量[kg\mathrm{kg}]
v\boldsymbol{v}
速度ベクトル[m/s\mathrm{m/s}]
式 (2)ニュートンの第2法則
∑F=dpdt\sum\boldsymbol{F}=\frac{\mathrm d\boldsymbol{p}}{\mathrm d t}
質量が一定なら ∑F=ma\sum\boldsymbol{F}=m\boldsymbol{a} と同じ関係になる。
03.

運動量が保存される条件

複数の物体や流体をひとまとまりの系として考える。系に作用する外力の合計が0なら、式 (2) より全運動量は時間とともに変化しない。これが運動量保存則の基本的な意味であり、式 (3) で表される。

配管やノズルでは流体が領域へ出入りするため、空間に固定した検査体積を考える。定常流で、入口と出口が一つずつあり、各断面の速度を一様とみなせる場合、流体に作用する合力は式 (4) で求められる。

式 (4) は、入口から入る運動量流量と出口から出る運動量流量の差を表すベクトル式である。ノズルでは速度の大きさが変わり、曲がり管では速度の向きが変わるため、どちらの場合も力が生じる。

ノズルを通る流体の運動量変化ノズルに入る運動量流量より出る運動量流量が大きく、その差に対応する外力が流体へ作用する。検査体積入る運動量出る運動量ṁ𝐕₁ṁ𝐕₂Σ𝐅 = ṁ(𝐕₂ − 𝐕₁)
式 (3)孤立した系の運動量保存
∑Fext=0⟹Ptot=一定\sum\boldsymbol{F}_{\mathrm{ext}}=\boldsymbol{0}\quad\Longrightarrow\quad\boldsymbol{P}_{\mathrm{tot}}=\text{一定}
系に作用する外力の合計が0であること。系の内部で作用し合う力は、全運動量を変化させない。
式 (4)定常一次元流の運動量収支
∑F=m˙(V2−V1)\sum\boldsymbol{F}=\dot m\left(\boldsymbol{V}_2-\boldsymbol{V}_1\right)
定常・1入口1出口。圧力力、重力、支持力などを含む、流体に作用するすべての外力を左辺に入れる。
04.

記号・単位

まず式 (1)〜(4) に現れる基本記号を確認する。ベクトル量とスカラー量を区別し、SI単位で次元を確認する。特に運動量流量 m˙u\dot m\boldsymbol{u} の単位は kg·m/s2\mathrm{m/s^2} = N であり、力と同じ次元になる。

基本式で使う主な記号
記号意味SI単位
p\boldsymbol{p}運動量ベクトルkg⋅m/s\mathrm{kg{\cdot}m/s}
mm質量kg\mathrm{kg}
v\boldsymbol{v}物体の速度ベクトルm/s\mathrm{m/s}
ρ\rho流体の密度kg/m3\mathrm{kg/m^3}
u\boldsymbol{u}流体の速度ベクトルm/s\mathrm{m/s}
∑F\sum\boldsymbol{F}流体に作用する外力の合力N\mathrm{N}
m˙\dot m質量流量kg/s\mathrm{kg/s}
05.

一般形への拡張(発展)

式 (4) は、定常かつ入口・出口の速度を断面代表値で表せる場合の実用形である。非定常流や速度分布をもつ一般の流れでは、検査体積内の運動量と、検査面を通過する運動量を積分して扱う。

まず物質系に ∑F=dPdt\sum\boldsymbol{F}=\frac{\mathrm d\boldsymbol{P}}{\mathrm dt} を適用し、運動量を P\boldsymbol{P} = ∫ρu\rho\boldsymbol{u} dV\mathrm dV と表す。レイノルズ輸送定理を使うと、物質系の変化を「検査体積内の蓄積」と「検査面を横切る流束」に分けられ、式 (5) を得る [1,2]。

式 (6) は同じ法則を流体中の各点で表した局所形である。応力分布や数値流体解析で用いる発展的な表現なので、初めて読む段階では式 (4) まで理解すればよい。

式 (5)固定検査体積の一般的な積分形
∑F=ddt∫CVρu dV+∮CSρu(u⋅n) dA\begin{aligned}\sum\boldsymbol{F}&=\frac{\mathrm d}{\mathrm d t}\int_{\mathrm{CV}}\rho\boldsymbol{u}\,\mathrm dV\\&\quad+\oint_{\mathrm{CS}}\rho\boldsymbol{u}(\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n})\,\mathrm dA\end{aligned}
n\boldsymbol{n} は検査面 CS\mathrm{CS} の外向き単位法線。流出では u⋅n>0\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}>0、流入では u⋅n<0\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}<0。
式 (6)コーシーの運動方程式(発展)
ρDuDt=∇⋅σ+ρb\rho\frac{\mathrm D\boldsymbol{u}}{\mathrm D t}=\nabla\cdot\boldsymbol{\sigma}+\rho\boldsymbol{b}
連続体近似。σ\boldsymbol{\sigma} はコーシー応力テンソル、b\boldsymbol{b} は単位質量当たりの物体力。
01
物質系にニュートンの第2法則を適用する。
02
運動量を体積積分で表す。
03
レイノルズ輸送定理で蓄積項と流束項に分ける。
04
圧力・粘性・重力・支持力を外力として整理する。
06.

使用条件

使う式に応じて、検査体積の選び方、定常性、断面内の速度分布、力の向きと符号を明示する。

固定検査体積
式 (5) は空間に固定した検査体積の形。移動・変形境界では相対速度を用いる一般形が必要。
定常流
定常なら蓄積項は0だが、入口・出口の運動量流束は残る。
1次元近似
断面平均速度を使う場合、必要に応じて運動量補正係数を導入する。
ベクトル
曲がり管ではxx, yy, zz成分ごとに収支を立てる。
07.

例題:水平ノズル

水平ノズルを定常に流れる水を考える。ρ\rho = 1000 kg/m3\mathrm{kg/m^3}、入口面積 A1=0.010 m2A_1=0.010\ \mathrm{m^2}、入口速度 VV₁ = 2.0 m/s\mathrm{m/s}、出口速度 VV₂ = 6.0 m/s\mathrm{m/s} とし、ここでは入口・出口の圧力差と重力のxx方向成分を無視する。

質量流量は20 kg/s\mathrm{kg/s}、したがって流体を加速するためのxx方向合力は80 N80\ \mathrm{N}となる。ニュートンの第3法則により、流体がノズルへ及ぼす反力は逆向きである。実際のノズル荷重では圧力力も含める。

式 (7)質量流量
m˙=ρA1V1=20 kg/s\dot m=\rho A_1V_1=20\ \mathrm{kg/s}
式 (8)x方向の合力
Fx=m˙(V2−V1)=80 NF_x=\dot m(V_2-V_1)=80\ \mathrm{N}
08.

計算ツールの考え方

計算ツールでは、式 (4) を同一直線方向へ限定し、質量流量を ρA₁VV₁ で置き換えて F=ρA1V1(V2−V1)F=\rho A_1V_1(V_2-V_1) とする。これは圧力力や重力を自動的に無視してよいという意味ではなく、除外できる条件を確認したうえで使う簡易計算である。

09.

よくある間違い

運動量方程式では、どの物体に働く力を求めているか、どの方向を正にしたかを最初に固定する。

圧力力を忘れる
入口・出口が同じ周囲圧力に開放されていないなら、圧力による面力を外力に含める。
流体と装置の力を混同
まず流体に働く力を求め、装置反力はニュートンの第3法則で向きを反転する。
曲がり管をスカラー式で解く
運動量はベクトルなので各方向成分に分ける。
定常なら力が不要と考える
定常でも入口と出口で速度ベクトルが異なれば運動量流束が変わり、力が必要。
10.

応用・関連

運動量保存則は、ノズル推力、曲がり管の支持反力、噴流が板に与える力、翼の揚力・抗力、ターボ機械、有限体積法によるCFDの離散化へ直接つながる。質量保存を扱う連続の式と組み合わせて使うのが基本である。

参考文献