FLUID MECHANICS · 02–03 / 基礎
ベルヌーイの式Bernoulli equation
流線に沿う圧力・速度・高さの関係を、機械的エネルギー保存として定式化する。
要旨
ベルヌーイの式は、非粘性・非圧縮・定常流れにおける機械的エネルギー保存を表す。同じ流線上では、圧力、速度、高さの各項が相互に変換され、その総和が一定となる。
02. 30秒で理解
同じ流線上で、圧力によるエネルギー、運動エネルギー、位置エネルギーの和を比較します。たとえば高さが同じ管で流速が増えると、損失のない理想流れでは静圧が下がります。
03. 原理と数式
定常・非粘性・非圧縮の流れを、同じ流線上の点1と点2で比較すると、単位質量あたりの機械的エネルギーは次のように表されます。
水頭で表す形
式全体を g で割ると、各項を流体柱の高さとして比較できます。
04. 記号・単位
| 記号 | 物理量 | SI単位 | 意味 |
|---|---|---|---|
| p | 静圧 | Pa | 流体が周囲を押す圧力 |
| ρ | 密度 | kg m⁻³ | 単位体積あたりの質量 |
| V | 流速 | m s⁻¹ | 流線方向の速度の大きさ |
| g | 重力加速度 | m s⁻² | 標準重力加速度は 9.80665 m s⁻² |
| z | 基準面からの高さ | m | 位置エネルギーを決める高さ |
| q | 動圧 | Pa | q = ½ρV² |
圧力には絶対圧でもゲージ圧でも使用できますが、点1と点2で同じ基準を使います。
05. 導出
粘性を無視した流体要素に、流線方向の運動方程式を適用します。これはオイラーの運動方程式を流線に沿って書いたものです。
-
流線方向の力のつり合い
圧力勾配と重力が流体要素を加速させます。
(1/ρ) dp + V dV + g dz = 0 -
密度一定として積分
点1から点2まで各項を積分します。
∫₁² dp/ρ + ∫₁² V dV + ∫₁² g dz = 0 -
各項を評価
圧力項、運動項、位置項をまとめるとベルヌーイの式になります。
p/ρ + V²/2 + gz = C
重要:この導出は、流体の速度を「圧力だけ」が直接決めると言っているのではありません。
境界条件と運動方程式によって流れ場が決まり、その結果として同じ流線上の圧力・速度・高さがこの関係を満たします。
06. 使用条件
✓ 基本形を使える条件
・定常流れ
・非粘性、または損失を無視できる
・密度がほぼ一定
・同じ流線上の二点
・ポンプやタービンによる仕事がない
! そのまま使えない場合
・長い管や細い管で摩擦損失が大きい
・ポンプ、送風機、タービンを含む
・高速気体で密度変化が大きい
・強い非定常流れ
・異なる流線間を比較する回転流れ
実務では損失と機械仕事を加える
配管計算では、ポンプが加える水頭 hₚ と損失水頭 hL を含む機械的エネルギー式を使います。
07. 例題
水平な縮小管で、下流の圧力を求める
密度 1000 kg m⁻³ の水が水平な管を流れています。点1の静圧は 200 kPa、平均流速は 2.0 m s⁻¹ です。点2の平均流速が 8.0 m s⁻¹ のとき、損失を無視して点2の静圧を求めます。
- 高さの項を消す
水平なので z₁ = z₂ です。
- 点2の圧力について整理する
p₂ = p₁ + (ρ/2)(V₁² − V₂²)
- 数値を代入する
p₂ = 200000 + (1000/2)(2.0² − 8.0²) = 170000 Pa
検算:流速が増えた分だけ静圧は 30 kPa 下がります。現実の管では摩擦損失が加わるため、同じ入口条件なら下流圧力はこの理想値よりさらに低くなります。
08. 計算ツール
点1の状態から点2の静圧を計算
定常・非粘性・非圧縮の基本形を使用します。入力する二点の圧力基準と高さの基準面は統一してください。
例題の値で 170 kPa になることを確認済みです。摩擦損失、ポンプ仕事、圧縮性は含みません。
09. よくある間違い
同じ流線上で高さ、損失、機械仕事などの条件をそろえた場合の関係です。別々の流れを速度だけで比較することはできません。
連続の式は質量保存、ベルヌーイの式は理想化した機械的エネルギー保存です。縮小管では両方を組み合わせます。
長い配管や細い配管では粘性損失を無視できません。損失水頭を含む式が必要です。
一般にはベルヌーイ定数は流線ごとに異なります。非回転流れなら流線をまたいで同じ定数として扱えます。
ベルヌーイの式は翼面の局所的な速度と圧力を関係づけますが、速度分布が生じる理由や全体の循環まで単独では決めません。「上下の空気が同時に後縁へ着く」という説明は誤りです。
10. 応用
実務では、連続の式から流速を求め、ベルヌーイの式または損失を含む機械的エネルギー式から圧力や必要ポンプ揚程を求める流れが基本です。
11. 前提知識・関連知識
前提知識
次につながる知識
出典
- 主出典Frank M. White, Fluid Mechanics, 9th ed., McGraw Hill, 2021. ベルヌーイの式、導出、適用条件の照合に使用。
- 大学資料MIT OpenCourseWare, “Bernoulli Equation, Pitot-Static Tube, Airspeed Measurement, and Pressure Nondimensionalization.” 式の形と計測への応用を照合。
- 補助資料NASA Glenn Research Center, “Bernoulli’s Equation.” 初学者向け説明、動圧、適用制限を確認。
- 単位・表記BIPM, The International System of Units (SI Brochure), 9th ed., revised 2026. Pa、m、s、kgとSI表記の確認に使用。
主出典、独立した大学資料、公的機関資料、SI規格を相互照合しました。外部の流体工学専門家による独立査読は未実施です。