FLUID MECHANICS · 01–02 / 基礎
密度・圧力・粘度Density, pressure & viscosity
流体力学の基本物性である密度、圧力、粘度を、定義式・SI単位・適用条件・水の計算例とともに解説します。
要旨
密度は単位体積当たりの質量、圧力は静止流体における等方的な法線応力、粘度は変形速度に対する抵抗を表す。三者はそれぞれ、慣性、力学的状態、運動量輸送を定量化する。
密度:質量と体積を結ぶ状態量
一様な物質の平均密度 ρ は、質量 m を体積 V で除して定義する。連続体力学では、十分小さいが分子スケールより十分大きい検査体積に極限を取った局所量 ρ(x, t) として扱う。
液体では通常の圧力範囲で密度変化が小さいため、ρ を一定とみなす近似がよく用いられる。一方、気体、高速流、温度差が大きい流れでは、密度を圧力・温度の関数として扱う必要がある。
- 密度[]
- 質量[]
- 体積[]
- 物理的役割
- 質量保存則と慣性項に現れ、同じ体積に含まれる物質量を決める。
- 主な依存性
- 一般に温度と圧力に依存する。相変化の近傍では不連続または急激に変化し得る。
圧力:面に垂直に作用する応力
静止流体では、ある点を通る面に作用する応力は面の向きによらず法線方向を向く。その大きさが圧力 p である。有限面積で一様とみなせる場合、法線力 Fₙ を面積 A で除して評価できる。SI単位のパスカルは 1 Pa = 1 N/m² である [1]。
絶対圧力は完全真空を零点とし、ゲージ圧力は周囲の大気圧を零点とする。状態方程式や蒸気圧との比較には、原則として絶対圧力を用いる。
- 圧力[]
- 面に垂直な力[]
- 受圧面積[]
- 絶対圧力[]
- ゲージ圧力[]
- 周囲の大気圧[]
粘度:速度勾配による運動量輸送
単純せん断流 u = u(y) を考える。ニュートン流体では、せん断応力 τ はせん断速度 du/dy に比例し、その比例係数 μ を動粘度ではなく粘度という [2, 3]。
動粘度 ν は μ を密度 ρ で除した量で、粘性による運動量拡散と慣性の比較に便利である。μ と ν は温度に依存し、液体では一般に温度上昇に伴って小さくなる。
- せん断応力[]
- 粘度[]
- せん断速度[]
- 動粘度[]
- 粘度[]
- 密度[]
- ニュートン流体
- τ とせん断速度が線形関係にあり、μ を状態に対する物性値として扱える。
- 非ニュートン流体
- 塗料、スラリー、高分子溶液など。見掛けの粘度がせん断速度や履歴に依存し得る。
計算例:20 °Cの水の動粘度
0.1 MPa、20 °C付近の水について、代表値 ρ = 998.2 kg/m³、μ = 1.002 × 10⁻³ Pa·s を用いる。これらはNISTが紹介するIAPWS系の標準相関に整合する丸め値であり、精密計算では温度・圧力を指定して標準式を評価する [4, 5]。
式 (5) に代入すると ν = (1.002 × 10⁻³) / 998.2 ≈ 1.004 × 10⁻⁶ m²/s となる。物性表を使うときは、温度、圧力、単位系、有効数字を必ず併記する。
| 量 | 記号 | 値 | SI単位 |
|---|---|---|---|
| 密度 | ρ | 998.2 | kg/m³ |
| 粘度 | μ | 1.002 × 10⁻³ | Pa·s |
| 動粘度 | ν | 1.004 × 10⁻⁶ | m²/s |
参考文献
参照日:2026年8月13日。外部専門家による査読は未実施です。
- [1] BIPM, The International System of Units (SI Brochure), 9th ed., ver. 4.01, 2026.↗
- [2] IUPAC Gold Book, “Newtonian fluid,” 5th ed.↗
- [3] IUPAC Gold Book, “shear viscosity,” 5th ed.↗
- [4] NIST, Contributions to International Standards on the Properties of Water.↗
- [5] NIST, Reference Correlations for Thermophysical Properties of Liquid Water at 0.1 MPa.↗