EngiAtlas 知識マップ
CHAPTER01ARTICLE01

流体力学 / 現象を捉える

FLUID MECHANICS · 01—01 / 基礎

流体とは何かWhat is a fluid?

本稿では、流体をせん断応力に対する力学的応答によって定義し、ニュートン流体の構成式および連続体近似の適用範囲を整理する。

読了目安 8分2026-08-11 更新用語・式・単位を一次資料と照合EN version

要旨

流体とは、静止状態においてせん断応力を持続的に支持できず、せん断応力が作用する限り変形を継続する物質である。この力学的定義には液体と気体の両方が含まれる。

02.

せん断応力に対する力学的応答

弾性固体では、せん断応力は有限のせん断ひずみと対応し、変形後の静的平衡が成立し得る。一方、流体では静的なせん断応力と釣り合う平衡状態は存在せず、せん断変形が時間とともに進行する。

弾性固体
せん断力

有限変形で静的平衡

流体
せん断力

せん断変形が時間的に進行

ニュートン流体の構成式

ニュートン流体では、応力テンソルのせん断成分は速度勾配に対して線形である [1, 2]。一方向速度 u = u(y) をもつ単純せん断流では、構成式は次式に簡約される。

式 (1) ニュートンの粘性法則
τ=μdudy\tau=\mu\frac{\mathrm d u}{\mathrm d y}
単純せん断流 u = u(y) に対する表示
τ\tau
せん断応力[Pa\mathrm{Pa}]
μ\mu
せん断粘度(動粘度 ν と区別)[Pa⋅s\mathrm{Pa{\cdot}s}]
du/dy\mathrm d u/\mathrm d y
速度勾配(せん断速度)[s−1\mathrm{s^{-1}}]

物理的解釈同一の速度差に対しては、代表長さが小さいほど速度勾配が増大する。したがって粘度が一定であれば、必要なせん断応力も比例して増大する。

03.

連続体仮定

流体は分子から構成されるが、巨視的な流体力学では、密度 ρ、圧力 p、速度 u、温度 T を空間および時間の連続関数として表す。代表長さが分子の平均自由行程に対して十分大きい場合、この連続体近似が妥当となる [3]。

場の変数
密度 ρ、圧力 p、速度 u、温度 T
適用条件
代表長さ L が分子の平均自由行程 λ に比べて十分大きいこと
非連続体効果
高真空、希薄気体、微小流路および衝撃波内部では別途評価を要する

液相および気相の流体力学的区分

液相

  • 通常の圧力範囲では体積変化が比較的小さい
  • 重力場では自由表面を形成し得る
  • 例:水、油、溶融金属

気相

  • 容器の体積全体を占める
  • 圧力変化に伴う密度変化が顕著になり得る
  • 例:空気、蒸気、燃焼ガス [4]
04.

流体力学における定義の帰結

01

静力学

静止流体の応力は面に垂直な圧力として表される

02

輸送現象

粘度は速度勾配とせん断応力を関係付け、摩擦損失を規定する

03

保存方程式

連続体に対して質量・運動量・エネルギーの局所収支を定式化できる

次節 · 01—02密度・圧力・粘度

流体の状態および輸送特性を記述する基本物性を定義する。

参考文献

用語、構成式および物性の区分は、国際標準用語集と公的研究機関の資料に照合した。参照日は2026年8月11日。外部専門家による査読は未実施である。

  1. [1] IUPAC, “Newtonian fluid,” Gold Book, 5th ed., DOI: 10.1351/goldbook.N04138.
  2. [2] IUPAC, “Shear viscosity,” Gold Book, 5th ed., DOI: 10.1351/goldbook.S05642.
  3. [3] J. Minor, “Approximating Fluid Flow from Ambient to Very Low Pressures,” NASA TFAWS, 2001.
  4. [4] NASA Glenn Research Center, “Gas Properties Definitions.”
  5. [5] E. W. Lemmon, “Thermophysical Properties of Fluids,” NIST, 2009.